二日目
愛媛での猫探し
【资料图】
爱媛寻猫
私はまだ海外旅行をしたことがないけれど、外国の地面に降り立つ瞬間ってきっとすごく感動するんだろな。フェリーに接舷された狭いタラップを降りながら、ふとそう思った。ローファー港のコンクリートに着く瞬間、「四国―っ!」と心の中で叫ぶ。人生初上陸だ。そのまま立ち止まって、おじさん集団の背中が遠ざかるのをしばらく待ち、充分に距離をとってから私は歩き出した。念をため、子供椅子は背中に隠すように後ろ手に持つ。手ぶらで家を出てきてしまったから、制服姿で子供椅子だけ持っているという謎キャラに私はなってしまっているのだ。あまり目たちたくない。
下着与渡轮衔接的狭窄舷梯时,我突然这么想道。虽然我还没有去过海外旅行,但踩在外国地面上的那一瞬间一定会非常感动吧。当我的平底鞋接触港口水泥地的那一瞬间,“四国——!”我在心中呐喊道。这是我人生中第一次登陆。就这样我停了下来,等大叔们的背影逐渐远去,有了一定距离后我才开始行动起来。以防万一,我把儿童座椅藏在了背后。因为是空着手从家出来,所以我变成了穿着制服拿着儿童座椅的奇怪角色了,我还不太想那么显眼。
今日も暑いのぉとか、わしはこのまま大阪やとか、がやがやと歩くおじさんたちの音と一定の距離を保ちつつ、トタン屋根が架かっただけの簡素な道路を歩く。またのご乗船を心よりお持ちしておりますと、スピーカーが言っている。地元の宮崎とは何かが違う場所をイメージしていたのだけれど、今のところ、音も空気も港のさびれ具合も、ぜんぜん違いがない。青空の色も潮の匂いも日焼けしたコンクリートの色も、拍子抜けするくらい地元と同じである。
今天也很热啊之类的,我就这样去大阪啊之类的,我和这些吵吵嚷嚷的大叔们声音一边保持着一定距离,一边走在只架着铁皮盖的简朴小道上。喇叭里传出了【期待您的再次登船】的声音。我曾幻想过这里会与我家乡宫崎有一些什么不同的地方,但现在看来,无论是声音,空气,还是港口的落寞程度,都没什么区别。无论是蓝天的颜色,潮水的味道,还是黑褐色的混泥土,都和我的家乡一样,令人失望。
「……鈴芽さん?」
カタン。背中でふいに椅子が動き、草太さんの声がした。私は思わず立ち止まり、「やーっと起きたぁ」と安堵の溜息をつく。
「草太さんぜんっぜん起きなかったから、全部夢だったんじゃないかって思い始めてました!」
フェリーターミナルを出るとそこはだだっ広い駐車場で、その端っこで私は草太さんに文句を言う。日の出から今までの 二時間ほど、何度声をかけても全く起きてくれなかったのだ、この人は。
“……铃芽?”
咔哒,椅子突然在背后动起来,传出了草太的声音。我不由得停下了脚步,放心的吁了口气说道“你可算起来了啊”
“草太先生因为你完全醒不来,我都开始以为这是一场梦了!”
我们离开了渡轮码头后来到了一个巨大的停车场,在停车场的一个角落,我对草太发起了牢骚。从日出到现在两个小时左右,无论我叫了多少次,这个人都没有醒来的。
「寝てたのか……俺……」まだ寝ぼけたような声。はあ―っ、ともう一度大きな溜息を私は聞かせる。
「——まあいいわ。さーて、猫!どうやって探しましょうか?まずは港で聞き込みからかな」
「え?」
「ていうか、ここどこだろう?」
私はスカートのポケットからスマホを取り出す。これだけでも持ってきていて良かった。フェリーの代金すら払えないところだった。
“睡着了啊……我……”还是睡懵了的声音。哎——我再一次长叹了一口气。
“——算了。接下来,猫!我们该怎么找到它呢?首先先在港口打听一下吧”
“嗯?”
“话说回来,这儿是哪啊?”
从裙子的口袋中掏出了手机,我很欣慰至少我还带了这个,不然差点连渡轮的钱都付不起了。
「おいちょっと、君!」
慌てたように言う草太さんの声を無視して、私はスマホを操作する。画面に居座っている環さんからメッセージ通知をささっと掃くようにスワイプし、マップを開いて現在位置を確認する。今いる場所は、愛媛県の西の端にある八幡浜港。東に歩けば市街地で、電車の駅も歩ける距離にある。ふむふむ。ちなみに我が家までの距離は。移動ログを表示させると、四国と九州が画面に収まるまでマップがぐーんとズーマアウトして、自宅まで219㎞と表示される。
“喂,等等!”
我无视了草太着急的声音,划拉着手机。我快速的划过了屏幕中间环阿姨发来的信息,打开了地图来确认现在的位置。现在是在爱媛县西部的八幡浜港,往东走是市区,电车站也在步行范围内。不错不错。顺便也看一下到我家的距离,用移动记录来显示的话,画面会突然变焦,直到四国和九州都收进画面里,上面显示离家219km。
「うわ、ずいぶんきちゃった」
「次のフェリーに乗れば、今日中には家に帰れるだろう。昨日話しただろう?俺のことは心配せず、君はこのまま家に——」
「ああっ!」
私は思わず声を上げる。
「え、どうした⁉」
「これって……!」
地面にしゃがみ込み、SNSの画面を草太さんに見せる。そこに投稿された写真に写っているのは、電車の座席にちょこんと座っている、あの白猫である。
「あいつだよねえ⁉」
「なんと……」
“哇,没想到这么远。”
“乘下一班渡轮不就能在今天之内回家了吗,我们昨天不是说好了?你不用担心我,就这样回家吧——”
“啊啊——”
我不由得叫出了声。
“啊,怎么了?”
“这个……”
我蹲了下来,把SNS上的画面给草太看。投稿的照片上的是那只白猫正乖乖坐在电车的座椅上。
“这是那家伙吧!?”
“怎会……”
現在地周辺だけに絞り込んだSNSのタイムラインに、ずらりと白猫の写真が並んでいる。昨夜は警備艇のへさきに、夜明けには港のもやいの上に、早朝は橋の欄干に、数時間前に駅のペンチに、数分前には電車内の整理券ボックスの上に、やけにSNS映えするあどけない仔猫ポーズであの白猫が写っている。お偏路中にキュートな出会い!やばいまずいマジ可愛い!電車に乗ってきたんですけどマジでリアル耳すま!ぬこ駅長にチュール!かわいい……かわいい……さっきからずっと隣におる……。写真には、いずれも語彙力が低下したような文章が添えられている。あの白猫は行く先々であざとく得意げに(だってそう見える)、人々に写真を撮られているのだ。
把SNS的时间线锁在这附近后,这一排全是白猫的照片。有昨晚站在警备艇船头的,凌晨在港口船上的,早上在桥栏杆上的,几小时前在车站长椅上的,还有几分钟前在电车票据箱上的,这只白猫摆出了很符合SNS需求的天真可爱小猫咪的姿势。【祈福路上的可爱偶遇!】【糟糕!不好!也太可爱啦!】【我是坐电车来的,耳朵真的可爱!】【猫猫站长!】【好可爱,好可爱,从刚刚开始就在我旁边!】照片下面全是些语言能力低下的词汇,那只白猫的所到之处都被人显摆的拍了照(我是这么觉得的)。
「え、ダイジン……?」
白いおひげが昔の大臣みたいで超キュート。頬ヒゲの上向きカールがマジ大臣。そんな投稿がいくつか続き、果ては「#ダイジンといっしょ」というハッシュタグまで発生している。
「まじか―……。そういえばソレ系の顔かな……?」
「こいつ、電車で東に移動している。追わなければ!」
草太さんはそう言って、カタンカタンと歩き出した。歩きながらギギギと背板を私に向け、決定事項を告げるようにクールに言う。
「ここでさよならだ。今までありがとう鈴芽さん。気をつけて帰りなさい」
“欸,大臣……?”
【白色的胡须就像以前的大臣一样超可爱】【脸颊的胡子往上翘简直大臣本人】有连续好几个这样的投稿,甚至还发起了【#和大臣一起】的标签。
“不是吧……话说真的是那种可爱的脸啊……?”
“这家伙正坐着电车往东移动,赶紧追它才行。”
草太这么说着一边咔哒咔哒的走了起来,一边走着还一边用吱吱作响的背板对着我,就像在宣告决定事项一样拽拽的说道。
“再见了,一直以来谢谢你了,铃芽小姐,回去的路上小心点。”
ええと、どこまで買えばいいのかな。まあとりあえずと、私は一番大きいパネルを押す。ピッという電子音が、やけに天井の高い駅舎に響く。
「あのなあ……」
手元でささやかれる抗議の声を無視し、私は発券機から切符を取る。お腹に椅子を抱えたまま、八幡浜駅の改札をくぐる。
「君は帰らないと、家族が心配するだろう⁉」
「平気!うち、放任主義ですから」
嗯,买到哪里好呢,总而言之我按下了显示屏上最大的那个,哔——的电子音在车站的天花板中回荡。
“我说你啊……”
我无视了手边那小小的抗议声,在取票机处把票取了出来。把椅子抱在身前,走进了八幡浜站的检票口。
“你不回家的话家人不会担心吗!?”
“没事!我家是放任主义。”
私は小声でしれっと言う。何でもないんですよーという顔でさりげなく椅子を持っているつもりだけど、さっきから違う制服姿の同年代たちにじろじろと見られている。松山行き―ワンマン列車がお参ります―。のんびりした声でスピーカーが告げ、やってきた銀色の車体に私たちは乗り込む。空いた車内はいくつかの駅を過ぎるとほとんど貸し切りのようになり、私たちはようやく緊張を解いた。
「……危険な旅行になるし、君についてこられても困るんだよ」
膝の上で、子供椅子が困ったような声で言う。
「そうなこと言ったって草太さん、」私は見ていたスマホを、草太さんの顔に近づけた。「これ!」
我不以为然的小声说着,虽然我很想装作若无其事的样子拿着椅子,但从刚刚开始就一直被穿着不同制服的同龄人盯着看。【开往松山的单人列车要到了】广播悠闲的发出了提示音,我们终于登上了这列银色列车。空空的车内在经过几个车站后几乎就像是被包场了一样,我们终于松了一口气。
“……这会是一场危险的旅行,而且你跟着我,我也很困扰的啊。”
在我的膝盖上,儿童座椅用很为难声音说着。
“就算你这么说,草太先生,”我把我在手机上看见的东西给草太看去。“这个!”
SNSに投稿されているのは、坂道を走る椅子の後ろ姿である。素早い動きでだいぶブレていて、それが逆にUMAっぽい怪しいリアリティを醸し出している。他にも埠頭を走る姿や、港の近くを歩いている今朝の姿。顔こそ判然とはしないけれど私が写った写真まである。「ヤバイもの見た!」「俺も!」「椅子型ドローン!?」「傍らの謎の制服少女の正体は!?」ちょっとした噂になっている。「#走る椅子」というハッシュタグまで、またしても出来ている。
SNS上投稿的是在坡道上奔跑的椅子背影。由于它快速的动作而导致画面虚焦,反而营造出了UMA(未确认生物)般可疑的真实感。其他的有在码头跑步的身影,还有今天早上在港口散步的身影。脸虽然看不太清楚但我拍了照片。【我看见了不得了的东西!】【我也!】【椅子型无人机!?】【旁边迷之制服少女的身份是!?】我还成传言了。甚至还出现了一个名为【#奔跑的椅子】的标签。
「なんと……!」
「ほらあ!人前じゃ歩くのも危ないでしょう!?こんなじゃ、草太さんが先に誰かに捕まっちゃうよ!」
「う……」草太さんは言葉に詰まり、しばらくしてから、鈴芽さん、と神妙な声で言った。
「仕方がない——。ダイジンを見つけるまで、よろしく頼む」
ギギと小さな音を立て、椅子が頭を下げる。やった、と私を思う。にっこりと笑って、私も草太さんに頭を下げた。
「こちらこそ!」
“怎会……!”
“你看吧!都说了在人的面前走很危险的了!?再这样下去,草太先生会被别人抓走的!”
“嗯……”草太一时语噻,过了一会儿用别扭的声音叫了我的名字。
“没办法——。在找到大臣之前,拜托你了。”
椅子发出了吱吱的声音,低下了头。好耶,我想着。我微微一笑,也向草太低头回礼。
“彼此彼此!”
ようやく同行を認めてもらえた。よーしやるぞ―っと気合を入れて顔を上げたら、遠くの座席から幼児が不思議そうにこちらを見ていた。幸い母親はスマホを覗き込んでいる。あぶないあぶない。草太さんを元の姿に戻す責任が、私にはあるのだ。草太さんが人間の姿を撮り戻すまで、私が彼を守るのだ!
总算是得到了同伴的认可。当我鼓足干劲抬起头时,远处座位上的小孩正不可思议的看着我们,辛亏他的母亲正在看着手机。危险危险。我有责任让草太回到原来的样子,直到草太回到原先人类的样子,我都会保护他的!